美味しい物。
夏が終るとこれが欲しくて仕方ない
焦げ紫の「それ」を手のひらにずしっと乗せると
張りのある皮が艶やかに光を反射する。
私は生暖かいのが好き。
指先でそっと摘まむと甘くて少し緑臭いような
芳醇な香りが鼻腔を擽り私のテンションは
密かに上がるっていく……
長く伸ばした爪で皮をなぞるように捲ってみる
と、今までずっと我慢していたかのように
液体がトロンと指を濡らす。
思わず舐めあげながら「それ」を口に入れる
私の口の中は「それ」の香りでいっぱいになり
舌で弄んでからそっと噛む……
美味しいよね、葡萄。